慶応大・吉村泰典名誉教授をお招きして産婦人科の未来を考えるセミナーを開催
7月29日、慶應義塾大学名誉教授、吉村泰典先生を足立病院にお招きして、当院職員、医療関係者を対象に、『明日はどうなる? ~産婦人科の未来を考える~』をテーマにセミナーを開催いたしました。
吉村先生は、3,000人以上の不妊症治療、5,000人以上の出産にたずさわるなど臨床の第一人者であるだけでなく、日本産婦人科学会理事長、第2次安倍内閣における内閣参謀参与などの要職を務められ、周産期医療の環境整備、医療従事者の待遇改善、特定不妊治療費助成制度の確立や、出産育児一時金、妊婦健診の公的助成の増額など社会制度の側面においても、産婦人科医療に多大な貢献をなされてきました。
セミナーは吉村先生の講演と質疑応答の2部制で行われました。吉村先生は『超少子化社会における生殖医療 ~未来を見すえて~』と題された講演のなかで、日本の少子化の危機的な状況を分析。少子化が社会状況の変化によってもたらされており、またその結果が社会に対して様々な深刻な状況をもたらすことを説明されました。
つづいて、そうした社会危機に対して、産婦人科医療が貢献できることとして、いままでの「不妊治療」から「生殖医療」への転換の必要性を主張。今の不妊治療、分娩の保険適応は、残念ながら少子化対策には不十分であり、身体症状としての「不妊」を治療するのみならず、生殖医療にまつわる法的環境整備、生殖医療を受ける夫婦への社会制度的サポート、女性の健康維持のための教育など多岐にわたる分野への働きかけをおこない、女性のリプロダクティブライツの確立、産んでみたいと思える社会の実現が急務であると説かれました。
質疑応答では、会場の医師、助産師、看護学生からそれぞれの立場から質問。「男性の生殖医療や育児への参加を支援するにはどうすればよいか」という質問には、吉村先生ご自身が教授職を務めながら「ワンオペ」で育児に取り組まれた「元祖イクメン」エピソードを紹介し、男性自身や社会の偏見、意識を変えていくことの難しさを説明されました。
吉村先生のユーモアを交えたわかりやすい弁舌に、会場からはたびたび笑い声があがり、和やかな雰囲気のなかセミナーは閉会となりました。足立病院は、今後も地域医療の向上のため、みなさまと学んでいく場を提供していきたいと考えております。